「と、いうわけで、今日からメンバーに入ります、朱鷺戸あやです! 皆よろしく!」
 あやの挨拶と共に、全員から拍手。
「てか、朱鷺戸って本当の苗字だったのかよ」
「うっさいわね。スクレボ初めて読んだ時に私自身もびっくりしたわよ」
「だろーな」
 恭介は笑いながら、
「そのせいで余計同一化しちまったか」
「ええ。そのお陰で余計あなたに酷い目に合わされたわ。まるで俺の好きなキャラを汚すなと言わんばかりに」
「んな意図ねーよ。邪推すんな」
「はん、どーだか」
 いきなり恭介に憎まれ口を叩くあやに、理樹は小毬と小声で会話する。
「あの二人、仲悪いんだっけ?」
「さ、さぁ? 向こう側でも恭介さんとあやちゃんが話してた記憶無いし・・・」
「僕らが覚えてないだけかな?」
「ど、どうなのかなぁ?」
 とはいえ、恭介はそこまで気にした様子も無く。
「それじゃ、全員自己紹介していけ!」
 恭介の言葉に、一番手にあやに近づいたのは、意外なことに佐々美だった。
「転校してきてその日のうちに、とは。何か理由でもあるんですの?」
「まぁね。不思議な世界で繋いだ絆、ってとこかな」
「なるほど。それではわたくしが判らないのも仕方ないですわね・・・」
「別に関係ないわよ、そんなの。これから仲良くなればいいだけでしょ?」
 当たり前のように言うあやに、佐々美も笑って、
「そうですわね。それでは改めて。わたくし、笹瀬川佐々美と言います。よろしくおねがいしますわ」
「さ、さささ、さ?」
「さ・さ・せ・が・わ!」
「ご、ごめん。外国暮らし長かったから難しい日本語は・・・。うん、よろしく、佐々美」
「い、いきなり名前呼びですの!?」
「え、だって日本って友達は名前で呼び合うものじゃないの?」
「・・・・・・間違っては居ないと思いますけど・・・。まぁいいですわ」
 佐々美についで、今度は佳奈多。
「二木佳奈多。よろしく」
「・・・よろしく」
 あっけない挨拶に、さしものあやもそれだけで沈黙。
「って、だめだめだめ、それじゃだめだよおねーちゃん!!」
「う、うるさいわね。他に何話せって言うのよ」
「かなちゃんって呼んで、とかいろいろあるじゃん」
「言わないわよそれだけは・・・」
 葉留佳に乱入され、佳奈多はため息をついた。
「・・・いろいろ、ごめんなさい」
「え?」
「・・・気づいてたけど、気づかない振り、してたから」
「・・・あぁ」
 あやはようやく納得がいったと頷いて、
「気にすること無いわよ。あの場じゃ私はそういう立ち位置だったしね。だから、今度はそういうの無しで仲良くしてくれればいいと思う」
「・・・そうね。ありがと」
「うん、よろしく、佳奈多」
「私もあっさり名前なのね。まぁ、苗字で呼ばれるよりそっちのほうがいいか」
 苦笑しながら、
「こちらこそよろしく、あや」
「おお、お姉ちゃんが名前呼び捨てた!? 珍しく愛想がいい!?」
「うるさい、この馬鹿妹」
「ひどっ!?」
 佳奈多は自分と入れ替えるように葉留佳を前に出す。
「ほらあなたの番よ」
「いえっさー! 私、三枝葉留佳、公式の都合上一応18歳以上! あそこの無愛想姉の双子の妹!」
 何気に危険発言があるのは気のせいか。
「双子? というか、姉妹なのに苗字違うの?」
「やはは。その辺は事情という奴ですヨ。あんまり気にしないでー。よろしくね、あやちゃん」
「おっけ。よろしく、葉留佳」
「ちなみに、趣味は悪戯特技はトラップー! ってお姉ちゃんいきなり耳引っ張らないで!?」
「マイナス方面の趣味を堂々と公言しない」
「あ、トラップなら私も自信あるわよ!」
「おおお! これは同好の志かー!?」
「冗談でしょ・・・」
「・・・心休まる暇が無くなりそうだな」
 ため息混じりに、今度は謙吾。
「宮沢謙吾だ。今度は、気兼ねなくよろしく頼むぞ、朱鷺戸」
「うん、こちらこそよろしく、謙吾君」
 こちらは簡潔ながら友好的に済んだようだ。
「西園、美魚と申します。朱鷺戸さん・・・、いえ、この流れだとあやさんと呼ぶべきですか」
「そうね、そうしてくれたほうが嬉しいかな」
「では、あやさんと。よろしくおねがいしますね」
「こっちこそよろしく、美魚」
「時に、あやさんは漫画がお好きと聞きましたが・・・、こういうのはいかがでしょう」
「え、なになに?」
「ちょっと待て!!」
 薄い本を取り出そうとした美魚の襟元を、恭介が引っつかんで距離を取らせる。
「お前いきなり人様に何見せようとしてるんだ」
「いえ、せっかくですから私も同好の友を、と」
「もうちょっと隠れてやれ・・・」
「そうですね。そうします。ではあやさん、続きは後ほどに」
「え、ええ・・・。何だったのかしら」
「知らん・・・」
 汗一筋垂らして美魚を見送るあや。恭介は頭を掻いてから。
「あー、一応俺もやっとくか?」
「いらないわよ。恭介でしょ。知ってるわ」
「・・・一応俺先輩なんだが、何で呼び捨てなんだよ?」
「あんたなんかに敬称なんて勿体無いわ、ふん」
「きょーすけ。お前あやに何したんだ?」
「・・・・・・まぁ、ちょっといろいろ」
 さすがに、向こう側で殺しまくったとか言えない。
「あたしはこの馬鹿の、不本意ながら、一応、妹の、棗鈴だ」
「・・・鈴、そんなに嫌そうに言われると兄ちゃん悲しい・・・」
「うっさいボケ。これが何かやったら言ってくれ。あたしが蹴飛ばしてやる」
「あら、それは頼もしいわ。よろしく、鈴。この馬鹿は是非、二人掛かりでとっちめるわよ!」
「二人がかりか。それいいな」
「よくないわ!」
 理不尽な同盟を結ばれて頭を抱える恭介である。
「てか、お前人見知りどこ行ったんだ?」
「そんなのしてる暇無い」
「・・・・・・あー、そうだよな」
 鈴の目指す先は人見知りなんてしてたらいけない場所だ。
「さて、筋肉の出番かな」
「お前やらなくていいぞ」
「何でだよ!?」
 鈴から理不尽な突込みを貰いつつ、真人。
「理樹の魂の相棒、井ノ原真人だ。筋肉が必要なら俺に言いな。いつでも力になるぜ」
「待て真人! 理樹の魂の相棒は俺だああああ!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 理樹君は私の相棒よ!?」
「「な、なんだとおおおおお!?」」
 いつもの流れかと思いきや、あやまで乱入するこの展開。
「私と理樹君は一緒に何度も死線を乗り越えてきたんだから! ねぇ、理樹君!」
「・・・・・・・・・・・・ごめん、その辺覚えてないんだ」
「そ、そんなーーーーーーーーー!?」
「へっ、まぁいいさ、なら魂の相棒の座を賭けて、お前もライバルだ! 負けねぇぜ、朱鷺戸!」
「ふっ、その言葉、後悔させてやるわ、真人君・・・!」
 何故か妙な流れになっている。
「では私なのですー! 能美クドリャフカです、よろしくお願いします、あやさん!」
「うん、よろしくー。・・・・・・くーちゃん」
「何故か私だけちゃんづけです!?」
「いやだって年下っぽいから・・・」
「わ、私だって一応公式の都合上18歳以上なのです!」
「見えないわよね」
「見えないよねー」
「わふー!? そこの姉妹さん酷いですー!?」
「はっはっは。まぁその辺にしておきたまえ。では、トリは私かな?」
 最後の唯湖。
「来ヶ谷唯湖という。よろしく頼むよ、あや君」
「うん、こちらこそね。唯湖」
「・・・・・・すまん、名前呼びは勘弁してくれないか?」
「え? 何で?」
「何でって、そもそも名前で呼ばれるのが好きじゃないからなんだが」
「それはおかしいわよ。自分の名前でしょ? 一生物なんだから大切にしないと」
「いや、だからだな」

 妙なバトルが勃発した!

「きっと呼ばれ慣れてないだけだよ。ね、唯湖?」
「くっ」
 唯湖は38のダメージを受けた!
「ならば、どうしても名前で呼ぶというのなら、君の事はアヤヤラーと呼ぶぞ」
「あ、アヤヤラー?」
「そうだ。恥ずかしいだろう」
 唯湖の攻撃!
「・・・ちょっと可愛くていいかも」
「何故だ!? 私のセンスがおかしいのか!? そうなのか!?」
 あやは華麗に受け止めて反撃した! 唯湖に45のダメージ!
「というわけで、問題ないわよね」
「くっ、だったら名前で呼ばれても反応しない」
「え、ちょっと、どういうことよ、唯湖」
「そういえば昨日内閣決議案が出ていたな。どうなったかな」
「・・・え、無視・・・?」
 あやは57のダメージ!
「私、ここに来れば皆と今度こそ友達になれると思ったのに・・・。無視、するの・・・?」
「ぐっ」
 唯湖の良心に120の大ダメージ!
「酷い・・・。私、皆なら受け入れてくれるって信じてたのに」
「うぁぁぁ・・・それ、卑怯だろ・・・!」
 唯湖は倒れた!!

「・・・ふふ、わかった、もう好きに呼びたまえ・・・。おねーさんまたもや大打撃だよ・・・」
「よかった! やっぱ友達はお互い名前呼びよね!」
「はっはっは・・・」
 白旗をあげた唯湖を見て、理樹は頭を掻く。
「・・・どっかで見たようなやり取りだなぁ」
 小毬を見ながら、理樹。
「ふえ?」
「いや、なんでもないよ」
 質は違えど天然は強いという話。

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