「あや、どうしたの?」
理樹君が声をかけてくる。
でも、どうして?
何で今日はそんなに楽しそうじゃないの?
理樹君が笑ってくれるように、私は余計にはしゃいでる。
二人できた町外れの遊園地。
理樹君は、今日は一度も私に笑いかけてくれない。
「理樹君、あれ乗ろ、あれ!」
指差した先は観覧車。
何度も理樹君と乗った。
二人であの観覧車から見る夕暮れの町。
理樹君はいつもあの景色を見ると笑ってくれた。
私を抱き寄せて、いつも笑ってくれてた。
あそこにいけば、きっと笑ってくれると、信じて。
ゴンドラに乗る。
なんだかちょっとわざとらしい位はしゃいで、そしたらゴンドラが揺れた。
バランスを崩して理樹君にしがみつく。
そのまま、理樹君の顔を見上げると、理樹君は私から目を逸らした。
アクリルの窓の外を見る理樹君の顔は、何かを言おうとして飲み込んでるみたいで。
理樹君、誰を、探してるの?
「ね、ねぇ、見てた? 隣のゴンドラ、今キスしてたわよ?」
せがむつもりじゃない。
ただ、こっちを見てほしかった。
見てほしいだけ。
「・・・理樹君、今日は、どうしたのよ?」
「え?」
「だって・・・」
手だって繋いでくれない。
それに、理樹君、何を言おうとしてるの?
・・・嘘だよね。そんな言葉、言わないよね?
私の気持ち、真っ直ぐな愛、灰になっちゃったり、しないよね?
「ずっと、そばにいたい。お願い、一人にしないで・・・!」
理樹君は、私を痛々しそうに見つめて、
「・・・うん、そうだね。言わなきゃ、いけないよね」
お願い、私の予感が、どうか外れていますように・・・。
「あや、あのね、鼻毛、出てる」
「・・・はひ?」
「・・・・・・あー! やっと言えた! 今日一日ずっと気になって気になって仕方なかったんだ!!」
「・・・え、いや、うん、ちょっと確認するわね」
・・・うん。手鏡。
・・・・・・うわ、何これ。すっごい間抜け顔。
ああ、そりゃ理樹君だって目ー逸らすわ。
「・・・って、そういうことは早く言いなさいよおおおおおおおおお!!」
「いやだって言えるわけ無いじゃないか!?」
「それでも言ってよ!! 今日一日抱えてた私の切ない気持ちはどうしてくれるのよ!!」
「そんなの知らないよ!」
何故だろう。
何かサヨナラって言ってもらったほうがむしろ綺麗だった気がする。
ああ・・・ほんとに・・・。
何て・・・無様・・・・・・(滂沱